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唄の闇市 Vol2
2002年12月21日、唄の闇市 Vol2、ムラノカエ・平田聡・イマムラアツシ、荻窪・Boxinglee's Cafe

ムラノカエさんの歌に向かう誠実さは、バンド・ガソリンズにいるときと変わりませんでした。エレキギターの弾き語りなのに、アレンジもさほど変えていないのに、届いてくる歌。歌を大事にしようという芯の強さは全くブレていませんでした。あらためてメロディの良さも再認識。彼女の弾き語りの世界は、必ずバンドにも良いフィードバックを与えるような予感がします。大林宣彦映画「ふたり」の主題歌「草の想い」(作詞:大林宣彦、作曲:久石譲)と敢えてリズムを抑えて歌った「誕生日」がいつもよりやわらかく聞こえ、印象に残りました。

平田聡さんは古い作品を多く歌いながらも、若々しい感じを与えてくれました。なんでも屋からめやにまで、ずっと一緒に活動してきた者からみると、ここ数年の彼は自分の過去の作品を焼き直しているような感じで、長年の聴き手としては歯がゆい思い抱いていました。この日の競演者たちからも刺激を受けたことをきっかけに、自身の核となっている作品を時間軸に沿って振り返ったことで、その思いは払拭されました。実は涙ぐんでしまいました。「迷い風」や「Permanent Circle」が持つ変わらぬ強さ、幾分青さを感じさせるものの今の心情を吐露した新曲が印象に残りました。

この日のイマムラアツシさんは、カバーを多く盛り込んだり、平田さんのボンゴと共演したりと、今までに無い挑戦を聴かせてくれました。それらが全て成功しているとはいい難いものの、亡くなった友人とそのバンドの作品に対する愛情の深さを表した「落ち武者ソング」は伝わってくるものがありました。共演は相手を意識するあまり、個の表出が薄くなってしまった感がありましたが、もっとぶつかり合いがあると刺激的になるのでは。バンド・武蔵野とは違ったギターリフの「人間失格」、思い切り「菜穂ちゅわ〜〜ん」と崩して連呼した「拝啓戸田菜穂様」に潔さを感じました。

シーサーズ
2002年8月4日、うえの夏祭り、シーサーズ、上野・不忍池弁天堂前

不忍池では蓮の花が綻び始めている。弁天様を奉ったお堂へと続く縁日の提灯。弁天堂の前に仕立てられた畳一畳ほどの赤い演台。
下町に根付く芸人さんが少ないお客さんの前で汗を流している。
後ろのワゴン車ではシーサーズの面々が出番を待っている。
小さな集会場で使われるような小さな拡声器。そして三線用の小さなギターアンプ。
吃驚するほど質素な機材でシーサーズの歌が始まる。

杞憂であった。
いつも通りの朗らかなステージ。

初めてシーサーズを観たとき、その衣装や編成から、なにかミーハーな感じを受けた。ところが、歌は本物であった。
というか、本物・偽物という以前の、既に彼女たちの身体に染みついて消化されてしまった無邪気な歌に心を許したのだった。
「沖縄」という部分はシーサーズの一部でしかない。むしろ、そこからはみ出てしまっている部分のほうが大きい。
そのスケールはかなり広い。島も時代もジャンルも超えて、自分たちが好きと思える歌を素直に楽しんで歌う。
同じような姿勢で歌に向かっているのは、西では、ふちがみとふなと。
島唄から金色夜叉、東京節まで、無節操の上で持田明美さんの温度を与えられていく歌たち。
力強いリズムを放ちながら舞い踊り、歌を軽々とグルーヴの上に載せていく宇野世志恵さんの太鼓。
隣に居たお年寄りが自然と歌を口ずさみ、外人さんまでがカチャーシーに乱舞する。

傍らの大樹で鳴く夏の蝉たち。
夕立さえなければ、もう少しシーサーズを楽しめたのに。嗚呼。

FACTORY
2002年8月3日、FACTORY、くるり 他、お台場・フジテレビ

今日のFACTORY収録は、くるりにやられました。
過日の野音では私の心に全く響かなかったのが、まるで冗談だったかのように、新鮮な音楽が鳴っていました。

サポートのドラマー・臺太郎(ダイ・タロウ、ex.FEED)さんとの組み合わせは、若干荒削りながらも、大胆で豊かなグルーヴを感じさせてくれました。
何かを振り切ろうとしながらも、新鮮な音とリズムを心から楽しんでいた笑顔の岸田さん。いつも以上に繊細に音を紡ぐ大村さん。そして、こんな強靱でしなやかなグルーヴを持っていたのか、と唸らせてくれた佐藤さん。全員が歌にへばりつきながら音楽を奏でていました。
一曲ごとにじわじわと涙が溢れました。

感傷ではありません。音に心を揺さぶられました。
これからが楽しみです。くるり。

手紙
2002年7月18日、ライヴ・レターズ公開録画、遠藤賢司、芝浦・スタジオSt.GIGA

テーブルにキャンドルが灯った洒落た客席に驚きました。
贅沢な空間でのライブでした。
たっぷりのトークを挟みながら進んだため、いつものライブの高揚感が途切れてしまった感も否めませんでした。

でも、ファンからの「手紙」を紹介しながら進めるこの番組の構成は面白いと思います。内容もかなりマニアックだったり、極めて個人的な感想が多かったのですが、そこが良い。意外と、ありそうで、無い番組かも知れません。

そのアーティストの良さを知るには、初めて接した人に対しても、耳障りのよいキャッチーな惹句ではなく、聴き手の心を揺さぶった体験や手探りの生の言葉を届けてあげるほうがいいと思うのです。
たくさんの方の手紙とエンケンさん、大坪さんの反応、とても興味深かったです。

私のメールも紹介していただいて恐縮です。
あ。でも、大坪アナ。「言音一致」を「ごんおん」と読みましたね?
罰金です(笑)。

ピアノ
2002年6月13日、ライブビート公開録音、小谷美紗子 他、渋谷・NHK505スタジオ

ライブビート公開録音、良かったです。
小谷さんが「40才の独身女性」と見事な表現をしたNHKスタジオ505のピアノ。しっかりした音でした。
その音と向かい合う歌は、会場のせいもあって、いつもよりことばが届いてきました。
「火の川」で紅潮する頬。
「眠りのうた」を聴く頃には、私も何故か肌に火照りを感じていました。
放送が楽しみです。

LIFE WORK感想文
2001年3月25日、LIFE WORK、山口洋(guest 渡辺圭一・池畑潤二)、吉祥寺・Star Pine's Cafe

ライブ自体、初体験だったのですが、面白かったです。
それにしても、山口さんのギターのスゴイこと。
グレッチで最高の音を出すのは知っていましたが、アコギでもあんな音を出すとは!

山口さんの歌とギターは、一体となってひとつのリズムを、歌を紡いでいました。声もギターも、ささやきから大声まで。
その抑揚に、今このときの山口さんを感じました。ライブ、です。
「ボヘミアンブルー」がグッときました。

渡辺&池畑さんのリズムも切れ味鋭く図太かったです。
ヒートウェイヴ+ルースターズ=ヒーターズ、でしょうか(笑)。
個人的には、もうちょっと大きな音で聴きたかったです。まだまだ。

トーク&ライブ
2001年2月19日、トーク&ライブ、三上寛・地引雄一(雑誌イーター発行人)、吉祥寺・MANDA-LA2

寛さんと地引さんのトーク&ライブ。充実感がありました。
EATERの愛読者だったので、お二人の話に興味があったのですが、創刊号の続編といった感じで、寛さんの音楽をもっと楽しむヒントをもらった気がします。

ライブ後、ご一緒したシュガーフィールズ・原朋信さんを交えて4人でお話しさせていただいているとき「個」を持ってしなやかにしぶとくやり続けている人は、どこかで出会えるんだなぁ、と実感しました。
寛さんの歌は、故・江戸アケミさんに聴かせたいです。
GKさん。本当にいつも充実した企画をありがとうございます。感謝しています。

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いつも寛さんのライブで「あの人がG.K.さんかなぁ…」と思っていたのですが、先日はちゃんと挨拶もせずスイマセンでした。
確かに、この日の寛さんは丁寧に歌っている感じでしたね。それでいて迫力があるのは凄いです。
原さんも自身の日記ページに、この日のことを書かれています。

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私は2月19日にMANDA-LA2に行ったのですが、同じ構成でした。
私も「十九の春」と新曲ラッシュには驚きましたが、常に「今」を歌おうとする寛さんの姿勢に共鳴しました。
その後、譜面台をどけて、いつもの歌を続けてくれたのも嬉しい誤算でした。
ところで、新作はどこからリリースされるのでしょうか。オフ・ノート?

小谷美紗子
2002年2月8日、800円コンサート、小谷美紗子、TOKYO FM HALL

TOKYO-FMホール、いい会場でした。
その高い天井に跳ね返って降りてくる、背筋の伸びた歌声が気持ちよかったです。
聴いたことのある歌は、最後の「眠りのうた」だけでしたが、簡素な弾き語りだからこそ初めて聴く歌もスッと心や頭や肌に入ってきたように感じました。
ちょっと悪く云うと「いじわる」な歌たち。
普段、ごまかしたり隠したりしている部分をつついてくることば。
でも、不思議とそれは痛くならない。
熱く入り込むのでもなく、クールに突き放すでもなく、遊ばせてくれるようなやわらかさをもった歌声とピアノの音色。
鍵盤に手を載せる前、暫くの静寂を小谷美紗子さんはひとり楽しんでいるかのようでした。

VAJRA
2002年1月27日、VAJRA(三上寛・灰野敬二・石塚俊明)、吉祥寺・MANDA-LA2

灰野さんのボーカルが入った「DEEREYE」が出色でした。
「トンボ」「砂山963」の轟音の中に、夢の微睡みへの入口のようなものが見えてしまいました。
GKさん。いつも良質なライブを企画していただいてありがとうございます。

小川美潮忘年会
2001年12月28日、小川美潮忘年会、小川美潮&うずまきまずう、渋谷・2's YOSHIHASHI

忘年会を企画・運営して下さったみなさんお疲れさまでした。
ありがとうございます。楽しかったです。
「福の種」以来のファンながら(あのドリフもテレビ観てました)、美潮さんのライブは2回目、うずまきまずうは初体験でした。ライブは、延々と続くMCに美潮さんの人柄を感じ入り、名古屋弁「マイファニーバレンタイン」に爆笑し、次第に大きなうねりのような波を生み出していった演奏と背筋のまっすぐな美潮さんの歌声を堪能しました。美潮さんの詞のユニークさも再認識。小さい会場ならではの味わいでした。

余興では、美潮&大川さんに強引に歌わせるという「押し掛け伴奏」三線で、狼藉を働いてしまいましたが、私はアガると大胆な行動に打って出る場合があるので(笑)。みなさんどうかご無礼をお許し下さい。
お詫びのしるしに(?)小川美潮忘年会合唱団「十九の春」の録音を、私のサイト「耳の穴」の「録り下ろし」コーナーにて紹介させていただきました。楽しき宴の記録ということで、お楽しみ頂ければ幸いです。

三上寛4
2001年11月30日、三上寛4(三上寛・林栄一・石塚俊明・永塚博之)、吉祥寺・MANDA-LA2

林さんのサックスは、寛さんと相性がイイですねぇ。
一部は探り合うようなセッションだとすると、二部はトシさん爆発の4人一丸となった演奏。
寛さんは歌も声もギターも、一切根拠の無い音は鳴らしていない、と気付きました。
寛さんがバンマスらしく見えた夜でした。

鬱休み2days
2001年11月18日、鬱休み2days、シュガーフィールズ・スネオヘアー・peck・マーガレットズロース 他、渋谷・eggsite

放心状態。
ハラトモノブという人のせい。
その歌のせいです。
ロックンロール。恋。大江慎也。二律背反。江戸アケミ。脈動する静脈。ニールヤング。眩しい太陽の光。三十年間の青春。
脱ぎ捨てられた洗濯物のようなポンコツが、再生した。

シカラムータ・セッション505公開録音
2001年11月11日、NHK-FMセッション505公開録音、シカラムータ、渋谷・NHK505スタジオ

セッション505公開録音、参加させていただきました。

私は、シカラムータのライブを1回しか観たことの無い、いい加減なファンなのですが、以前観たときと随分、音の印象が違って聞こえました。植村昌弘さんがいた頃は、プログレっぽい印象が強くありました。それはまるでジェットコースターのようですごくスリリングで面白かったのですが、一方で歌心のあるメロディを薄めてしまってもいたように思います。

ドラムがツノ犬さんに代わり、今度は「ドンガラガッタ度」(←なんじゃそりゃ(笑))が上がったように思います。土着的な音が加わったせいか、曲のせいなのかは分かりませんが、東欧の舞曲のように聞こえるのです。民俗舞踊のための音楽のような。
それと今回は、テーマから外れた部分で繰り出される各人の演奏に驚かされました。譜面に出来ないような音を、その効果を考えて即興的に紡ぎ合わせていく手腕。セッションではなく、グループらしさが感じられました。

一番印象に残ったのは(坂本弘道さんのグラインダー奏法ではなく(笑))、大熊ワタルさんが「せーの!」と云って曲を始めた次の瞬間に、クラリネットのたった1音で会場の空気を包み込んでしまったことです。

また放送で楽しみたいと思います。

追伸
みわぞうさん。入場券を手配頂きありがとうございました。

道を描こうとする音 −シュガーフィールズ路上演奏観察記録−
2001年10月20日・10月27日、シュガーフィールズ、渋谷・ハチ公前路上・新宿・アルタ前路上

部屋のCD棚をよくよく見てみると、いつのまにかシュガーフィールズのCDはほとんど揃っていた。
あるインタビューでくるり・岸田繁さんが「アンアーバーに刺激を受けて詞の書きかたを変えた」と語っていたのを読んで、その記号のような言葉をCD店で探した。確かにアンアーバーは奇妙だった。しかしそれ以上に私を惹き付けたのは、こんな奇妙なCDを出しているカフェ・オというレーベルとその張本人である原朋信という人だった。
あるときCD店で「カフェ・オ・サンプラー」というオムニバスCDが目にとまった。500円。なら、買ってみるか…。これが私にとって実質的なシュガーフィールズとの邂逅。チョコレートパフェの「うたたね」もTheケンの「セスナ」も素晴らしかったが、シュガーフィールズの「文法T」は別格であった。自分が歌をやっていることもあって、アコースティックギターとほんのわずかの電子音だけで、歌を立たせることのできる手腕に驚き、そして表現しようとしている世界と使われていることばのズレの無さにためいきが出た。

2001年秋、久しぶりのアルバム「鬱休み」を発表したシュガーフィールズは、渋谷ハチ公前の路上にカフェ・オを「出店」した。
白いゆったりとしたソファとドラムセット。そして小さなテーブルに並べられた真新しいCD。赤い光が「鬱休み」の文字を浮かび上がらせ、グラスに浮かべたキャンドルに灯がともる。
セッティング中の原さんに初対面の挨拶をする。歌からして、もっと神経質そうな感じの人を想像していたのだが、原さんは準備の手を休め、きちんとこちらを向いて人なつっこい笑顔でにこやかに迎えてくれた。なにかその風貌は、中学生の頃、少し変わった個性と大人びた自分の意見を持っていたがために、いじめられてしまっていた同級生の姿を思い起こさせた。再会、のようであった。
私の勝手な思い込みを形にしてしまったような、個性的で自己主張の強い、改造したい放題のエレキギター。元のギターの面影すら残っていない四角く切ったボディには、弾き込まれた跡の伺えるテレキャスターのネックときらびやかな音色のEMG製ピックアップが取り付けられている。足元には、CD「シュガーヴィールスB」の収録曲「3:05(SansampMIX)」にも名を残すエフェクター・サンズアンプ。
いつ始まったのか気が付かないぐらいさりげなく原さんが愛器を爪弾き始めると、それに呼応するかのように三好さんのベースがゆっくりと反復を始める。サウンドチェックからそのまま繋がっていく演奏は、次第にリズムの形を浮かび上がらせてくる。ギターの響きが時折色を変え、ベースが土台をつくっていく。
そこに静かにではあるが、十分な存在感を持って入り込んできたのが、山神さんのドラムである。路上ゆえか、バスドラムの無い、スネア、ハイハットとライドシンバルの簡素きわまりないセット。そこから繰り出されるリズムの鮮やかさ。普通であれば、ドラムはリズムをキープする役割を果たすのだが、シュガーフィールズの場合はドラムが一番上に乗っかっているのである。あるときは、歌と対等の存在感さえ感じさせる特異なドラミング。まるで2人の出す音に切り込んでいくようで、山神さんの穏やかで華奢な風貌からは想像もつかない鋭さである。音の感触こそ違えど、イルボーンや町田町蔵・人民オリンピックショウのドラマーだった箕輪扇太郎(政博)さんや小川美潮バンドの青山純さんのように、独特の浮遊感があって、なおかつ強烈に「歌心」を感じさせるドラミングである。剣道や長刀(なぎなた)の試合を観ているかのような、次々と打ち込まれる小気味よい一撃。その応酬が続く。そしてその音は、原さんの歌を変奏するかのように、主題とは別のフレーズを歌いながら原さんの歌声を高みへ押し上げていく。
シュガーフィールズの曲にはじまりのカウントが無い。原さんの呼吸をそのまま音に変換したかのようなギターフレーズから、次第に曲が立ち上がっては消え入るように静寂が訪れる。そのさまは、水の波立つ様子に似ている。水面に原さんの歌と音がポチャンと投げ入れられる。三好さんの音がそれに誘われ、静かに波紋を広げていく。山神さんは自在に吹く風を呼び起こし、波を立てては吹き抜けていく。そうしてはじまり終わっていく曲は、たった「ひとつ」である。どの曲もどの歌も同じ。曲がつながっている、というのとは違う。たった「ひとこと」を伝えるために目の前で行われているたったひとつの「演奏」。ぼうっとした輪郭のまま広がっていくシュガーフィールズからメッセージ。
シュガーフィールズのライブ初体験の私には、驚くことがもうひとつあった。砂糖工場(「sugar factory」:シュガーフィールズ・ファンサイト)の工員さんと呼ばれるファンのみなさん、である。路上での演奏が続く中、工員さんたちは立ち止まる人々に「鬱休み」のチラシを手渡しては、シュガーフィールズの素晴らしさを伝えている。じゃみこさん、潤一郎さん、4n5さん。みんな年季の入ったファンのようなのだが、よく熱狂的なファンが持っているマニア的な特権意識といったようなものは微塵も感じられない。誰に指示されるでもなく、ごくあたりまえのように準備や片付けを手伝い、チラシを配り、CDを売るお手伝いをしている。一方、私はと云えば、路面に座り込んで演奏を楽しんでいるばかりなのだが、誰もそれを責めたりしないし、手伝って欲しいという素振りすら伺えないのである。その場にいるファンも、バンドも、そして原さん自身も、誰もがそこで鳴っているシュガーフィールズの音楽に手を差しのべて、そうっと支え持ち上げようとしている。「村から逃げ出せ!愛によって繋がれ!」アルバム「鬱休み」の帯に書かれていることば。まるでそのままの関係がそこにあった。

翌週末、シュガーフィールズの掲示板にまたしても告知が出された。今度は新宿。前日、一日中降り続いた憂鬱な雨のせいで、予定されていた池袋の路上ライブが中止となり、仕切りなおしとなったのである。慌てて新宿アルタ前の広場に着くと、すでにいくつかのグループが、大がかりなPAシステムを持ち出して大音量で演奏している。果たしてこれが日曜の夜なのだろうか、といささか面食らうも、気を取り直してシュガーフィールズを探す。
交差点の向こうを見ると、広場の喧噪を避けるように、少し離れた路上でてきぱきとセッティングが進められていた。それをじっと見ていると突然声をかけられた。よしおさんとの出会い。私にとっては謎の人物であったよしおさんは、なんと名古屋から来ていて、若葉マークファンの私に、まだ決まったばかりのユニークな企画を次々と紹介してくれる親切丁寧な方。いつも書き込みをさせていただいている掲示板「sugar factory」の工場長さんなのであった。うーむ。シュガーフィールズのファンは、なんと人間の出来た人たちばかりなのだろう。奇跡である。続いてじゃみこさん登場。山神さんからデジカメを預かり、カメラマンとなる。今日も、シュガーフィールズから発せられる愛がよしおさんやじゃみこさんを動かしている。それとまったく同じように、彼らの愛もシュガーフィールズから新しい音を沸き立たせようとしている。
ワンコードで始まった今夜の演奏には、うねりがある。三好さんのベースがボトムの太い音を響かせている。渋谷では終始ソファに座り、控えめなプレイに徹していたように見えた三好さんだが、今日は立ってプレイしているせいか躍動的な音がする。ついついつられて私もそのグルーヴに身を委ねる。煽られてなお凄味を増す山神さんのドラミング。これでバスドラムが入ったら、一体どれほど強力な音になってしまうのだろう。原さんの無心にギターを掻き鳴らす姿とそこから繰り出される切れ味鋭い音塊からは、何かが乗り移ったような気配がぼうっと流れ出していた。
先日、渋谷で原さんと話した、故・江戸アケミさんとじゃがたらの話。踊りながら、私は、じゃがたらのライブでいつも味わうことのできた「大きなうねり」のような感覚を想い出していた。どこかにしまい込んでいたその感触が、身体の奥から引っ張り出されたようであった。揺れながら、シュガーフィールズの背景に目をやる。夜。都市。ビル。電飾。交差点。信号。あがた森魚ファンのおじさん。街。時刻。広告。飛行機。「街の音を形にしてるんだ」と云った原さんのことば。気が付くといつのまにか主客転倒し、シュガーフィールズが街の背景となっていた。魔法、だった。

残念なことに、幸せな魔法は、規則正しい街の秩序を何よりも重んじる警官の叱声によって解かれてしまうという、後味の悪いものになってしまった。しかし、シュガーフィールズが路上に放ち、私の中に流れ込んできた音は、醒めない麻酔のようにまだ身体のどこかに残っている。

今度あの道を歩いたとき、私は口笛を吹くだろう。
そうしてシュガーフィールズが描きかけた絵の続きを描こう。
交番の前で(笑)。

「不破ンク・ザッパ&渋さ客ズ・オンステージ」
2001年10月7日、横濱ジャズプロムナード、渋さ知らズ大オーケストラ、横浜・かながわドームシアター

横濱ジャズ・プロムナード、10月7日。かながわドームシアター、12時30分。開演ギリギリに駆け込むと不破大輔さんとすれ違う。何故か目が合い「頑張って下さい!」などと云ってしまう。あぁ、いつもこうだ。なんでもっと気の利いたことが云えないのだろう。
気を取り直し会場入り。前の方の席を探し腰掛けると、右にちょっと堅そうなジャズファン(←推測)、左に初老の品の良い女性(←見た目)。なんか雰囲気違うナー。私の渋さ知らズ初体験は、同じ横浜・寿町フリーコンサート。うーむ。どう考えても渋さの顔ではなくジャズフェスの顔である。しかも辺り一面!

と、タンバリンの音に合わせてホーンズが客席を練り歩きはじめる。「かえるのうた」なんて吹きはじめちゃったもんだから、ステージに現れた不破さんはドリフの公開録画よろしく会場に輪唱をさせる。うーん、イイ雰囲気になってきたかも。
ステージ演奏開始。早々にダンサーも登場。手拍子はあるが、やはりちと重い。空気が。私も座っている場合では無いな、と思い直し、次の曲から脇の通路で踊る。ダンシング仲間数名。逆ウィングにも数名。あぁ、ファンはこれだけなのか???でも楽しまなきゃ損。
噂には聞いていたが、それにしてもこの会場の音響はヒドイ。音が回りまくって輪郭がボヤけてる。しかもPAが最悪!バリトンサックスなんか、ある音だけ極端にバカでかい。イコライザーをいじれ!楽器の音のバランスも最低!あぁ、三重苦。ヘレンケラー。ユリゲラー。由利徹。オシャマンベ(笑)。

そのせいか、今日の演奏も精彩を欠いている気がする。不破さんは譜面台にあるキリン生茶には目もくれず、舞台袖からキリン生を持ってくる。「おはようございます。昨日の酒がようやく抜けてきました。」とごあいさつ。そうだよなぁ、真っ昼間。で、迎え酒。しかし演奏はボロボロになっていく。演奏を止めてチューバにソロをとらせたり(サタデーナイトフィーバーを引用!)、不破さんがパーカッションを叩いてみたり。うーむ。。。。。。しかし希望の光が射し込んだ。ほとんどのメンバーを座らせ、楽器を絞り込みエレキギターのソロに入ったとき、曲は全く崩れてしまったのだが、新しいグルーヴが生まれてきたのだ!いつもの集団で生み出すグルーヴを敢えて捨て去り、もう一度何もない原野から音を建て直していく過程。それは魔法を見るようであった。ダンドリストの面目躍如である。

このとき私はあるミュージシャンの姿を不破さんに見ていた。フランク・ザッパ。ステージ上で自分の音楽を自由に操り変容させていった男。そして自分の音楽の一番最初の最良の聴き手。

斯くしてこの最悪条件に見舞われた渋さ知らズ・オーケストラは、音の立ち上がっていく様という興奮を体験させてくれたのであった。

しかしこれだけでは済まなかった。

終盤に差し掛かった頃、足元のおぼつかなくなってきた不破さんが会場に手招き。セーラー服の少女をステージに呼び寄せる。彼女はトロンボーンを手にしている。そして物怖じすることもなく堂々としたソロを吹きはじめたのである!喜ぶメンバー&会場!不破さんも慌ててマイクを向ける。そうして「本多工務店のテーマ」が始まると、今度は最前列に座っていたファンの手を引っ張りステージに引き上げようとしている。「号令」は発された!気が付くとステージに駆け上がっていた。最悪の会場、かながわドームシアター唯一の良い点はステージが低いことであった(笑)。手を差しのばしてくれるメンバー。あぁ「蜘蛛の糸」である。私と同じ「号令」を聞いたファンがステージ上に集まってくる。演奏する渋さ知らズを取り囲むファンの数。無数。おそらく百人近い人があのステージに居たのではないか。乱舞乱舞乱舞。もう今までの不満がなんだったのかわからなくなるほど最高の瞬間。同じステージに上って聴いた渋さの「生音」は会場で聴いていた音が嘘に思えるような美しさ。みんなデタラメな踊り。ジャンプ。るつぼ。指揮台の近くにいた私は、不破さん用マイクをつかんでテーマを歌う。歌う。歌う。会場では規制されていたカメラのシャッターを切る。切る。切る。片山さんが嬉しそうに笑っている。トロンボーン少女もすでに渋さ知らズ然としている(笑)。気が付くと不破さんが頭の上に束ねていた髪がほどけている。その姿はまるでフランク・ザッパ、その人であった。

決して会えなかったザッパさん。しかし今、渋さ知らズは音楽のカタチこそ違えど「雑派」のバトンを受け取った。指揮者・不破大輔と抱擁をして、私はステージを降りた。

会場を巻き込むのではなく、ステージに会場をつくってしまった男。その「号令」までをも「指揮」にしてしまった男。次なる「号令」を待ちながら。

ウダロック
2001年10月6日、宇田川町ロックフェスティバル、早川義夫・高橋敏幸&どぶろくVISIONS・ECD・NinoTrinca・yuka 他、渋谷・クラブクアトロ

6日(土)を観させていただきました。ちょこっと感想を。

yuka:アコギ弾き語りなのですが歌が独特。しかも音程のコントロールが巧い。会場で会って話を聴いたらビョーク・ファンとのこと。なるほど。「浅川マキさんを想い出しました」と云ったら驚いたように謙遜されてました。もっと聴いてみたい人です。

裸のビラーズ:笑った。これは現代芸術でしょう。なんかひととき空気が和む。もっと終盤で盛り上がってきた辺りに出演すると効果的かも。

ブラン:怖かった頃のエレファントカシマシを想い出しました。ギターのザクッとしたコード感がイイです。

今井和雄:即興も年季が入ると説得力が違いますねぇ。楽器に甘えるのではなくて、攻めている探している音。

穴奴隷:衣装もスゴイが演奏はもっとスゴイ。もうネック見っ放し(笑)。少年ナイフのハードコア化。最後の「ニューヨーク、スカンジナビア」は腰砕け。シャッグスのラモーンズ化(笑)。

スバリ(怖+スハラケイゾー):客席に背を向け円陣を組んでの演奏。怖のドラマーは独特な速度感を感じさせる。

東京中低域:全員バリトンサックス。一人のバッキングでもベースとリズムが出ているのに目から鱗。変拍子を採り入れた曲もこの編成に合っていると思います。フロアに降りてきたときには思わず手拍子&ダンスしてしまうほど。

高橋敏幸&どぶろくVISIONS:今回のダークホース。音が出た瞬間「じゃがたら!」すぐにステージに走り寄ってしまった。ホーンもギターもリズム隊も見事に猥雑な世界をつくっている。ヘタクソだが印象的なメロディで壊れた世界を切り貼りする歌。先入観は消え去った。

ECD:とにかくラジカル。ラップとターンテーブルの丁々発止のせめぎ合いでこんなに肉感的で躍動的な音が出るのかと驚く。田口史人さんも踊りまくってました(笑)。

ニーノ・トリンカ:漫談のようなMCに戸惑いましたが(笑)、鹿島達也さんのアップライトベースにはそれだけで歌を感じてしまいます。HONZIさんの艶やかな音色のバイオリンを加えた小編成版のほうが違和感無く楽しめました。

PLACE CALLED SPACE:リッケンバッカー弾き語りが活きたのは最後のシンプルな曲。

THE FOX:ニューウェーブを想い出させる。サボテン?少年ナイフ?さかな?英語詞が嫌みにならない気負いの無さが魅力。もう一人ギターが入ると音の幅が出るかも。

小野瀬雅生ショウ ゲスト.横山剣(CKB):一緒に行った友人が一番楽しみにしていた。初見だったが巧いので安心して聴いていられる。その演奏力が横山剣さんと溶け合った「世界の半魚人」に酔った。オトナである。

渡辺勝:ガットギターに震える声を乗せて歌う。バンドでよりも一人の方がその声が届くような気がした。

早川義夫 演奏.ヰタセクスアリス:とにかくテレキャスターを持った早川義夫さんの登場に驚き戸惑った。ジャックスの「堕天使ロック」「マリアンヌ」を歌う。おそらくジャックスよりも巧いであろうその演奏はとてもいい演奏であった。とても良いのだが、やはり私たちと早川さんの間に「今鳴らされるべき音」では無かったような気がする。最後の「いつか」にはそれを越えてくれることを期待していたが、早川さんは珍しく笑顔でバンドの演奏を楽しみながら歌っていた。ピアノ弾き語りの持つあの台風のようなざわつきや微熱が続く感じこそ無かったが「音楽としては」十分であった。今度はやはり、あの歌を聴きたい。

布施さんはじめ、スタッフ、出演者のみなさん、いいライブをありがとうございました。

エンケン・ライブビート公開録音
2001年8月16日、NHK-FMライブビート公開録音、遠藤賢司バンド、渋谷・NHK505スタジオ

ライブビート公開録音を観てきました。

まずは競演のGo!Go!7188と思いきや、何といきなりエンケンが登場。
「歴史のわかる3曲を…」といって弾き語りを始めたのは「カレーライス」!
意外な幕開けにちょっと戸惑う。が、イイものはイイ。

続く「ラーメンライスで乾杯」ではいつものように途中で弦が切れる。
しかしそれぐらいで怯まないのがエンケンの底力。
弦が切れようとチューニングが狂おうと音が出なかろうと、エンケンは一度唄い始めた唄をやめない。
そのときその場でしか唄えない「変奏曲」を紡いでいく力。
そしてその場に立ち会えることの幸せ。張り上げた声に涙が出そうになった。

PA横に陣取った岸野雄一が操るサンプリラーのリズムが鳴り響く「エンヤートット」ではグレッチのロックジェットに持ち替え、シンセサイザーからグランドピアノまで戯れてまわる。
テクノやエレクトロニカをエンケンがリミックスするとこういう音になるのかも知れない。

湯川トーベンを招き入れ、二人で「外は雨だよ」。
白いグレッチのファルコンにフェイズシフターをかけて、あえてリズムを崩して唄の呼吸に合わせながら弾く。トーベンもそれにアドリブで応じる。
抑制の効いた素晴らしい演奏と唄。
今まで聴いたなかでも一番「春歌」を感じた瞬間であった。

そして黒いグレッチロックジェットの「不滅の男」リフで嶋田吉隆を迎える。
実にタイトなドラミング。エンケンもトーベンも珍しくにこやかな顔。
楽しそうで、こちらもついつい集音マイクの下にいるのを忘れて、一緒に唄ってしまう。

「東京ワッショイ〜踊ろよベイビー〜東京ワッショイ」に突入。
トシのいるエンケンバンドは三人の「果たし合い」のようで、それはそれでスゴイのだけれど、今日のエンケンバンドは本当に楽しそうに音楽を演っているのが伝わってくる。一緒に楽しむため、私もとにかく唄う。
会場最前列に歩み出たエンケンは、観客に一対一で「ワッショイ!」の掛け合いを挑む。
その瞳のつぶらなことと云ったら!
あの目が純音楽を創るのだな、と感じ入った。

アンコールはスローで重たいブルース「男のブルース(?)」。
トーベン&嶋田のリズムが腰に響く。それにあわせて珍しくブルージーなギターソロを続けるエンケン。
しかしそこにエンケンの唄が乗ると、エンケン流のオリジナルブルースになる。
どんなに英語で唄っても、フレーズを真似してみてもなかなか到達することのできないブルースの魂の奔流に、エンケンはエンケンのやり方で軽々とさかのぼって行ってしまう。

ラストは、紅白歌合戦で唄う唄「夢よ叫べ」。
とても小さな音で爪弾くギターの音にあわせて、エンケンの声は次第に会場を満たしていく。
エレキの轟音が巨大な岩となって向かってくるのだとすれば、この唄は高く高く、静かに空に向かって押し出されていく。
唄い終わりで伸ばされた声は、まるで肺がもうひとつあるんじゃないかと思えるほど絞り出されて、いつも必ず涙があふれてしまう。
仁王立ちに踏ん張った足をときどき確かめるようにしながら唄うエンケンは、自らの身体を地球の軸に重ねようとしているかのように見えた。

終演後、顔を洗い終えたエンケンさんとロビーでばったり出くわすも「お疲れさま。良かったです!」などど気の利かないことばしかかけられなかったことを恥じ、これまた拙いながらも、伝えられなかった想いを私なりの感想文にしてみました。

エンケンさん、純音楽をありがとう。

「夢の噂/2001はる」を観て
2001年4月30日、夢の噂/2001はる、三上寛・石塚俊明・林栄一・国仲勝男・渡辺勝・上野茂都 他、浅草・木馬亭

凄まじかった。
小山彰太さんを石塚俊明さんに代えての浅草・四人組。
三上寛さんの投げ出す唄の石を足掛かりにして、グイグイと上り詰めていく三人。
特に、林栄一さんは、今まで寛さんと一緒に演奏していなかったのが不思議に思えるほどの相性。
バサラがセッションの宇宙だったとすれば、四人組はまさにバンド。
前日、デュオで聴いた演奏を軽く吹き飛ばしてしまうほどの破壊力。
三上寛さんのファンになって随分経ちますが、最高の音かも知れません。

三上寛・石塚俊明インストアライブ
2001年4月29日、インストアライブ、三上寛・石塚俊明、新宿・タワーレコード

G.K.さん、いつも貴重な情報をありがとうございます。
今日は、新宿タワーレコードで行われた三上寛さん・石塚俊明さんのインストアライブに行って来ました。
寛さんは、また新しい世界に挑もうとしているかのようですね。
少ないことばを繰り返して唄うことで、その連想の裾野を広げさせようとしているかのようでした。
曲によっては、トシさんの強靱なリズムのせいもあって、パンクを感じさせられました。
CDにサインをもらっているとき、EATER8号を見せて「桃譚、連載終わりなんですか?」と尋ねたら「あれ?もう出たの。まだ送ってきてないなぁ。なんだか、この号で休刊するって云ってたよ。」との話。残念ですが、EATER onlineもあることですし、新しい展開に期待しましょう。 明日は、浅草木馬亭のライブに行きます。

渡瀬マキさんへ
2001年4月18日、リンドバーグ、渋谷・SHIBUYA-AX

「今日はじめてライブに来た人!」と渡瀬マキさんに云われて手を挙げた。

もうたぶんファンになって十年くらい経つと思うけれど、ライブはこの渋谷AXがはじめて。もう私のような三十路組は少ないようで、過去のツアーTシャツを着た(マキさん云うところの)「ヤ〜ング」がほとんど。ちと所在無い。

ビョークのSEが終わって客電が落ちる。聴いたことのない唄からライブがスタート。マキさんはアメリカン50sな衣装。赤いスカートでフレンチカンカン。どんどん知らない唄がつづく。あるインタビューで「新しいアルバムから全曲演奏する」というコメントを読んでいたので驚きは無かったけれど、久しぶりのツアーなのにこれだけヒット曲を織り込まないのも潔い。でも、その理由もよくわかる。新曲がイイのだ。私はリンドバーグの唄に「等身大」を感じる。無理をしていなくて、清々しい。何か初期の頃の感じを取り戻したような溌剌とした唄、演奏。特に驚いたのは、平川達也さんのギターソロ。手癖に陥らず、意表を付いた大胆なフレーズを、しかも丁寧に弾いていく。声がかすれ気味のマキさんをカバーするかのように。うーむ、夫唱婦随(逆かな?)。

中盤の静かなバラードやドラマチックな展開の曲では、最近のリンドバーグが手に入れた音楽の幅を見せつけられる。リズム隊の二人も出しゃばらずにあくまで唄を支え、かといって地味にならないように、ベースを持ち替えたり、スネアの音色を変えたりと、実にイイ演奏を聴かせてくれました。本当にリンドバーグというのは、バンドらしいバンドだと思います。アルバムを予習して先入観を持っていかなかったのも正解かも。

でも、マキさん、途中からほとんど声が出なくなってしまって、本当に辛そうでしたね。(ダーリンさんのコーナーで笑いすぎたのが原因か?)私もアマチュアながら、自分で唄をつくって唄っているので、声が出ない、唄えない、自分の声が思うようにコントロールできない辛さや悔しさは痛いほどよくわかります。でも、声にならず、音楽としての形が整っていなくても、あのときAXに居た人たちみんなには、マキさんが、リンドバーグが伝えたかったことが伝わったように感じられました。何かみんなの中に眠っていた唄が、ふわっと起こされたような。だから、どうかあまり自分を責めないで下さいね。

グッとくるライブをありがとう。次のライブ、渡瀬マキのリベンジ(笑)を楽しみにしています。

ライブシャワー・ファントムのライブ感想文
2000年10月31日、ライブシャワー・ファントム公開録画、くるり・Rize、渋谷・タワーレコード

まず、Rizeというバンド。SONYのRedHotのCMでジャンプしてる人です。最近こういうバンド多いですけど、震えません。何にも。多分、レイジ・アゲインスト・マシーンとか(実はあまり詳しくありません、ゴメンなさい)のファンだと思うのですが、ファンはファンのままでいいと思うのです。バンド組んだり音楽やらなくても。衝動が無い気がするのです。ファンの方すいません、辛口です(笑)。

で、くるり。私は後ろの方だったので、モニターを観ていたのですが、あれっ?岸田がフルアコ(「街」のビデオで弾いているギター)弾いてる…と思ったら、なんと佐藤くん!じゃあ岸田は…。冒頭の「モノノケ姫」は、ジョン・スペンサー&ブルース・エクスプロージョンばりのツインギター&ドラムス。しかも、ブレイクの部分で、キング・クリムゾン風のアルペジオを複雑に編み上げていくというもの。これを、このスタイルを、このアレンジを一曲目にもってくる、くるりというバンドの懐の深さには本当に驚かされました。

「惑星づくり」は、エンケンとやったときの印象が強いので、今ひとつ。ギターの音量が小さかったのと、ドラムにかけているディレイのタイミングが微妙にずれていたので。もしかしたら、すでに専属のPAがいるのかも知れませんが、こういうダブ的な音響処理をするのであれば、かつてのミュートビートやフィッシュマンズのように専属のエンジニアを付けたほうがよいと思います。演奏は、途中から行き場を見失ってファンキーなドゥービー・ブラザーズになってしまったのには笑いました。岸田、そりゃ無しだろ(笑)。

MCを挟んで「ワンダーフォーゲル」。途中歌詞を失念したりもしていたが、最大の失敗はCDと同じシーケンスを入れたこと。録音物ならまだしも、テクノの方法論をバンドに置き換えてみせる「惑星づくり」を聴かされた後では、この純正アレンジはいかがなものか。そういう意味では「惑星づくり」からメドレーで繋げて欲しかった。それが、くるりらしいと思う。もしくは、以前「モノノケ姫」を重たいファンクにしたように、テンポを落とすとか…。次のライブに期待しています。でも、この曲のベースラインは常軌を逸していて、佐藤くんらしさが出ているのです。よく聴くと。

最後は「ギター」。「坂道」がひしゃげてしまったような、不思議なコード展開の曲が、私小説というかひねくれた手紙の文面のような詞に似合う。途中、長いブレイクのあとの3人の声だけのハーモニー。これがくるりというバンドをよくあらわしていると思った。

新メンバー募集も含めて、音楽のためには全く手段を選ばないバンド、くるり。潔い、と思う。

「言音一致の純音楽」感想文
2000年9月13日、言音一致の純音楽、遠藤賢司バンド・くるり、渋谷・ON AIR WEST

エンケンとくるり。この組み合わせを是非観たいと思った。くるりが、遠藤賢司バンドにどんな刺激を受けた演奏を聴かせてくれるのだろうか、という興味。

最初のエンケンソロは、いつもよりおとなしい(といってもそこはエンケンなのだが)始まりだったが、「くるりは好きなバンドだから、容赦しません」といってソロ終盤に唄った「満足できるかな」〜「日本サッカーの唄」メドレーでは、友川かずきからモーニング娘。まで引用するサービス振り。おそらく、会場の半分以上を占めていたであろう若いくるりファンをもエンケン宇宙に巻き込んでしまった。痛快であった。

続くくるりは、岸田が風邪を公言し、敗北宣言かと思いきや、延々と続くインスト「惑星づくり」でボトムの太い演奏を聴かせてくれた。「さよならストレンジャー」発売前後のライブでは、岸田のギターサウンドの細さと森くんのドラムの単調さを感じたりもしたが、これが同じバンドか?と驚くほど逞しくなっていた。特に、森くんはスゴイ。いいドラマーになりました。その分、いわゆるグランジロックっぽい「ありがちな」音になりつつもあるが、このバンドの持つ意志はそんなところでとどまることを許さないであろう。この音と岸田の美しいメロディーが一体となった姿を、きっといつか聴かせてくれるであろうと信じている。新曲「トレインロックフェスティバル」(もう、タイトルだけで笑う)「モノノケ姫」でも、岸田のギターが炸裂。途中咳をしながらも、思い切り唄いあげる姿を見て、何故かブルースシンガーを思い出した。「傘」は、あの音をこういうアレンジでやるのか、というファンク色を感じさせるアレンジ。いつかライブアルバムを聴かせて欲しい。

そしてエンケンバンド。髪を白くして「史上最長寿のロックンローラー」からスタート。トシとトーベンが演奏に加わるも、ベースの弦が切れたらしくトーベンすぐに退場。エンケンのグレッチのチューニングも狂い始め、ちょっと危うい雰囲気に。「東京ワッショイ」「踊ろよベイビー」を経て、アコギに持ち替えた「荒野の狼」では落ち着きを取り戻し、いつもの凄まじさを取り戻していく。涙が出てくる。ラストの「不滅の男」でもそうだったが、この日のエンケンは、度々アンプににじり寄り、グレッチをフィードバックさせまくっていた。暴走はどこまでも続き、もう暴走こそがこのライブなのだ、という気にさせられる。フィードバックの続く中で大見得を切るエンケン。
アンコールはいつものとおり「夢よ叫べ」。この唄の美しさは、エンケンの覚悟の美しさにある。珍しくラストに持ってきた「俺は勝つ」。この曲順こそがエンケンの潔さ、「容赦しません」の現れだったのだと思う。

この日は、数々のトラブルがあったからこそ、エンケン、くるりの「底力」を思い知ることができた。純音楽よ永遠なれ!